Classical

恋愛相談 04

「それじゃあ、お先に失礼します。今日はご馳走様でした!」
そう言いながらタクシーに乗り込む野見山を、御堂と克哉は並んで見送る。
「ああ。また、明日」
「お疲れ様でした」
音を立ててドアが閉まり、野見山を乗せたタクシーが走り去る。
それが点滅する幾つものライトの中に紛れてしまうと、歩道には二人だけが残された。
「……」
「……」
さっきと変わらない、気まずい空気が流れる。
御堂は克哉が洗面所から戻るとすぐにあの場をお開きにした。
野見山のおかげでやはり克哉ときちんと話をするべきだと分かった御堂には、とにかく早くマンションに戻って克哉と二人きりになる必要があった。
「あの……」
隣りで克哉がなにやら口を開きかけたとき、ちょうど空車のタクシーがやってきた。
御堂は手を挙げてそれを止める。
「……帰るぞ」
「は、はい」
言い掛けた言葉を遮られた克哉は少しばかりしゅんとしてしまったが仕方が無い。
二人はそのままタクシーに乗り込み、マンションへと向かった。

ようやく部屋に辿り着くと、御堂は灯りをつけないままリビングに向かう。
荷物を床に置き、疲れきったようにソファに腰を下ろした。
「……克哉」
「はい」
所在無さげにソファの傍で立ち尽くしていた克哉を振り返る。
まともに視線が合ったのはどれぐらいぶりだろう。
これでようやく話が出来る。
「ここに座りなさい」
「はい……」
ソファの隣りを示してやると、克哉は言われた通りそこに腰を下ろす。
その様子は、これから親にお説教される子どもの姿を思い起こさせた。
すっかり元気をなくして俯いている横顔を見つめながら、御堂は言った。
「……すまなかった」
そう謝罪の言葉を口にすると、克哉は酷く驚いたようだった。
ぱっと顔を上げると慌てて首を振りながら、泣き出しそうに眉尻を下げる。
「ど、どうして孝典さんが謝るんですか? 孝典さんが謝ることなんてないです! オレが悪かったんです! 本当にごめんなさい……」
「違う。私は君の一番の理解者であるべきだった。私こそ、その自覚が足りなかったのかもしれない」
「孝典さん……?」
言っている意味が分からないのだろう、克哉は小首を傾げてきょとんとしている。
こういうところが克哉らしいのだ、と御堂は僅かに苦笑した。
「野見山君が君を誉めていたぞ。君がいると飲みの席が和むそうだ。愚痴吐きばかりになりそうなときも、君の言葉で場の雰囲気が変わると」
「野見山さんが……ですか?」
「ああ」
克哉が席を外している間、野見山はさり気なさを装いつつ御堂に対して懸命に克哉のことをフォローしていた。
どうやら彼は御堂が克哉のことを嫌っていると思ったらしい。
もちろんそれは野見山の勘違いなのだが、それでも彼の話は御堂にとって非常に興味深いものだった。
「……私のことを庇ってくれていたのだろう?」
御堂がそう言うと、克哉が目を丸くする。
「えっ? 庇うって……オレ、別にそんなことしていません」
「気を遣わなくていい。組織において不満が上に向かうのは当然のことだ。 本気で改善してほしいことならば直談判してくればいいと思うが、酒の席でつく悪態程度ならば私はまったく気にしない」
「そんな……」
野見山曰く、「佐伯は本当に部長を尊敬している」のだそうだ。
飲んでいると御堂が如何に素晴らしい上司であるかをやたらと幸せそうに語るらしく、それは聞いていて恥ずかしくなるほどだという。
しかし克哉が自ら進んで御堂の話をしだすとは思えず、恐らく他の誰かが先に御堂の名前を出すのだろうと思う。
克哉は誰と飲みに行くのかは必ず御堂に伝えているから、御堂もそこに同席しているメンバーは分かっている。
頻繁に名前が上がる中に、御堂を良く思っていない者が含まれていることも。
だとすれば当然いい話で名前が出るわけではなく、いわゆる上司に対する不平不満といった話題で出されているのだろうと容易に察しはついた。
野見山もそこまでは言わなかったが、酒が入っての愚痴大会などよくある流れだ。
御堂自身も言う側として散々経験してきたことで、立場が言われる側に変わったからといって気にすることでもない。
しかし、克哉はそうではなかったのだろう。
俯いたまま、ぽつぽつと話し始める。
「でも、本当に……庇うとかじゃないです。皆さんが誤解していることもあったから、オレはオレの知っていることを話しただけで……。 孝典さんが効率を重視するのは皆の努力を無駄なものにしたくないからだし、厳しい言葉を掛けるのはそれだけ期待と信頼があるからだって。 それでも意見はきちんと聞いてくれるし、チャンスも与えてくれる。結果を出せば認めてもくれる。 それって当たり前のことのようでいて、なかなか出来ることじゃないと思うんです。 すごく努力家だし……クールに見えるけど本当に情熱を持って仕事をしている方ですよねって言ったら、驚いてた方もいましたけど」
「……っ」
そこまで言って、克哉は照れ臭そうに笑う。
このとき御堂は野見山が言っていたことが決して誇張ではなく事実なのだということを痛感していた。
確かにこれは聞いているほうが恥ずかしくなってくる。
しかも本人の目の前で惚気る奴があるかと。
とにかく、これでは悪口を言おうとしていた者もさすがに毒気を抜かれてしまうことだろう。
それを無意識にやってしまうのが克哉の恐ろしいところでもあるのだが。
「だから、オレは……」
「克哉。もう、いいから」
これ以上続けられては堪らないとばかりに、まだ何か言おうとする克哉の肩を抱き寄せる。
昨日からたった一日離れていただけなのに、この温もりを感じるのは久し振りのような気がした。
きっと克哉はいつだってこうなのだろう。
御堂も自分が敵を作りやすいタイプの人間であることは充分自覚している。
それでも自分は間違っていないという自信があったから、今までもこれからもそれで構わないと思っていた。
しかし、克哉はそうではなかった。
少しでも上手くやっていけるように、そしてそれが少しでもいい影響をもたらすようにこつこつと努力する。
それは仕事の為であり、自分の為でもあるのかもしれないけれど、きっと一番は御堂の為なのだ。
本人は認めないだろうが、それは決して御堂の自惚れではないはず。
そんなことはとうに知っていたはずなのに、何故忘れていたのだろう。
込み上げる愛おしさに柔らかな髪に頬擦りすると、克哉もようやく力を抜いて身体を預けてくる。
そのままキスをしようと顔を上げさせたが、しかし克哉の表情はまだ何処か雲っていた。
「……どうした?」
「あの、オレ……」
口ごもりながら離れていく身体を名残惜しく思いつつ、克哉が自分から話し始めるのを待つ。
何か良くない話なのだろうか。
やがて克哉がおずおずと口を開いた。
「……本当のことを言ってしまうと、最近飲みにばかり行っていたのには別の理由があるんです」
「別の理由?」
「はい。すごく自分勝手な、別の理由が……」
そして、またしょんぼりと項垂れてしまう。
しかし御堂は何故かそのとき、きっとそれは克哉自身が思っているほどたいしたことではないのではないかという気がしていた。
だから克哉を励ますように、膝に置かれた手のうえにそっと手のひらを重ねてやる。
「君が自分勝手になるなど珍しいな。それほどのいったいどんな理由があったのか、ぜひ聞かせてもらいたいものだ」
「孝典さん」
御堂のからかうような言い方に少し安心したのか、克哉がクスリと笑う。
それから克哉はようやく話し始めた。
「以前に飲みに行ったとき、何故か恋愛とか結婚の話になって。その場で独身だったのが、オレと野見山さんと原田さんだけだったんです」
「ほう」
原田というのは現在、克哉と同じプロジェクトに関わっている男だった。
確か自分よりも二、三つ年下だったと記憶している。
明朗快活な性格で一室のムードメーカー的存在の彼は、異動してきたばかりの克哉にも良く接してくれた数少ない人間だった。
仕事も出来るのだが、出世欲があまり無いのが勿体無いと御堂は常々思っている。
「それで?」
「皆さんにあれこれ聞かれたんですけど、野見山さんは恋人募集中らしくて、オレは……その、いいんですけど、原田さんは実は一室に好きな人がいるってことが分かって。 ……絶対、内緒にしてくださいね」
「ああ」
「原田さん、小田切さんのことが好きなんだそうです」
小田切というのもまた一室の所属社員だった。
とても有能な女性で、御堂も含め上層部が非常に期待を寄せている人物でもある。
外見の好みは人によりけりだから何とも言えないが、美人の部類には入るだろう。
まだ独身のはずだが、高嶺の花と思われているのか浮いた噂は聞いたことがない。
「ふむ……。小田切君を狙うとは、また随分と志の高いことだな」
「原田さん、何度かアプローチしたこともあるみたいなんですけど。どうも小田切さんには他に好きな人がいるんじゃないかって言うんです」
「なるほど」
「それで、その好きな人っていうのが……」
そこまで言うと克哉は不意に口を噤んで御堂をじっと見つめる。
御堂は訳も分からずその目を見つめ返した。
「どうした? 続きは?」
「だ、だから……っ」
「ん?」
克哉は苛立ったように眉根を寄せると、後に続く言葉を絞り出した。
「小田切さん、孝典さんのことが好きなんじゃないかって……」
「……私?」
聞き返すと、克哉が恨めしげに御堂を睨みながら頷く。
そんな顔をされても可愛いだけなのだが、と思わず笑いそうになるのをなんとか堪えた。
それにしても、最後の最後にこちらに矛先が向くとは思っていなかった。
これでようやく話が見えてきた気がする。
「それを聞いて、オレ、すごく動揺してしまって。言われてみればそんな気もするし、でも本人がそう言ったわけじゃないからまだ分からないし。 とにかく原田さんにもまだチャンスはあるはずだから、皆で応援しようってことになったんです。 小田切さんと原田さんを含めた飲み会をセッティングしたり、さり気なく小田切さんに探りを入れてみたりして……」
「……」
「オレは狡いんです。もしも小田切さんが本当に孝典さんのことが好きだったら嫌だなって思いました。 仕事なのに話をしないでほしいなんて言えないし、小田切さんがそういう目で孝典さんのことを見ているのかもしれないと思うだけでも苦しくて……。 だから彼女が原田さんと上手くいってくれればいいのにって思って、そんな不純な動機で原田さんを応援している自分もたまらなく嫌でした。 でも嫌だと思いながら率先していいお店を探したり、原田さんを励ましたり……。 そのせいで孝典さんに寂しい思いをさせてしまっていることにも気づかないでいたんです。 オレ、孝典さんにも小田切さんにも原田さんにも酷いことしていますよね……」
そう言って、克哉はがっくりと項垂れた。
確かに克哉の言う通りかもしれない。
しかしその感情は御堂にも充分理解出来るものだった。
我侭だ、自分勝手だと分かっていながらどうすることも出来ない。
嫉妬や不安を持て余して、自分の感情や行動をコントロール出来なくなっていく。
だから御堂は克哉を責める気にはなれなかったし、寧ろ克哉が嫉妬してくれていたことが嬉しくさえあった。
「……いいんじゃないか?」
「えっ……?」
「小田切君の気持ちは分からないが、少なくとも私は彼女からそれらしきことを言われたことはないし、特別な好意を寄せられていると感じたこともない。 まあ、君達のしていることは余計なお世話に見えなくもないが、二人ともいい大人なのだから最終的にどうなるかは本人達が決めるだろう。 君の思惑がどうであれ、うまくいくときはいくし、駄目なときは駄目だからな」
「はい……」
「それより」
御堂は俯いたままの克哉の顎に指を伸ばし、上を向かせる。
「そんな理由で私を放っておいたなど、本末転倒ではないのか?  誰かが私を好きになることさえ嫌だというなら、もっと私の傍にいて、私の周囲に目を光らせておくべきだと思うが」
「そ、そうですよね。ごめんなさい、孝典さん……オレ……」
「悪いと思っているなら……どうすればいいか、分かるな? 克哉」
「……!」
御堂の言葉に克哉の頬がさっと朱に染まる。
それから小さな声で「はい」と呟くと、身体ごと御堂のほうに向き直った。
「孝典さん……」
克哉は微かに震える身を乗り出して、自ら御堂にくちづける。
こういう素直さが克哉の可愛らしいところだ。
柔らかな唇を幾度かおずおずと押しつけると、やがて舌先で御堂の唇を割る。
緩く開かれた御堂の口内に舌を差し入れ、御堂のそれに絡めようと内側を探った。
やがて暖かく濡れたものに舌が触れると、克哉はそれだけで甘い吐息を漏らす。
「んっ……ふ……」
ぴちゃぴちゃと湿った音を立てながら舌を絡め合う。
互いの吐息を飲み込むようにして奥を探り、温もりを味わった。
そのうちに御堂の胸元に添えられていた克哉の手が、御堂のシャツのボタンを外し始めた。
しかし御堂はその指先を握り締め、動きを制止する。
「君が先に脱ぎたまえ」
「っ……」
欲情に急く克哉は愛しいと思うが、その順序は譲れない。
克哉はますます頬を染め、それでも御堂の指示に従って服を脱ぎ始めた。
上着を脱ぎ、ネクタイを外し、ワイシャツの前を開けていくと滑らかな肌が姿を現す。
それからベルトに手を掛けたとき、克哉が伺うように御堂を見つめた。
「……全部脱ぐんだ」
「はい……」
克哉は立ち上がると、ベルトを外してズボンを落とした。
露わになったグレーのボクサーパンツの前は既に膨らみ始めていて、御堂がそれを見て少しばかり笑うと、克哉は羞恥にきつく目を閉じながら一気に下着を引き下ろす。
言われた通り全てを脱ぎ捨てた克哉は、御堂の足元に跪いた。
上目遣いに御堂を見上げながら次の指示を待つ姿は、まるで飼い主に忠実な犬のようだ。
思わず嗜虐的な気分が湧き起こり、御堂は尊大な態度で無言のままに両足を広げた。
克哉はその意味をすぐに察したらしく、ついた膝を進めて両足の間に近づき御堂のベルトを外す。
ファスナーを下ろし、下着の中から御堂のものを引き出すと両手を添えてそれを唇の前に運んだ。
「は……」
恍惚に蕩けそうな目をしながら、克哉はその先端を舐め始める。
溝を辿り、円を描くように動く舌先の生温かい感触に御堂も下肢が重くなっていくのを感じていた。
柔らかく棹を扱く指の動きと、敏感な皮膚に掛かる吐息さえも快感を高めていく。
やがてもう我慢出来ないと言わんばかりに克哉がそれ全体を口に含むと、思わず御堂も喉の奥から声が漏れていた。
「克哉……」
御堂のものが克哉の口内を犯していく。
温かな粘膜を擦りながら蠢く舌に撫でられると、それはどんどん容量を増して克哉の口内を満たしていった。
先端から漏れる透明な液は克哉の唾液と混じり合いながら、唇を伝って零れていく。
克哉の苦しげな息遣いと卑猥な水音だけが聞こえた。
「う……ぐ、ふぅ……」
「克哉……いい子だ……」
御堂は目尻に涙を滲ませながら必死に愛撫を続けている克哉の髪を優しく撫でた。
本当に克哉は最高の恋人だ。
いつでも自分を満足させてくれる。
彼以外の人間と生きていくなど―――いや、一人で生きていくことさえ考えられない。
こんなにも愛しているのだから、克哉は不安になったり嫉妬したりする必要はないのだ。
そう考えてから、御堂はふと気づく。
昨夜、なかなか帰らない克哉に対して腹を立てていたのは誰だ?
克哉が他の誰かに微笑むたびに、嫉妬したり不安になったりしているのは誰だ?
どんなに愛していても、愛されていると分かっていても、不安になるし嫉妬もする。
狭量だと言われても、我侭だと言われてもどうすることも出来ないのだから仕方が無い。
理屈で片付けられるものなら誰も悩んだりしない。
それが恋愛だ。
「克哉……君は恋人がいるのかと聞かれて、なんと答えたんだ?」
「えっ……」
御堂の問い掛けに、克哉は口を離して御堂を見上げる。
「どうして、そんなこと……」
「いいから、答えたまえ。なんと返事をした?」
「あ、あの……います、と答えました……」
「……それだけか?」
「いえ……」
本当は克哉がなんと答えたのか、野見山から聞いて知っている。
それでも御堂は克哉の口から聞きたかった。
「結婚するのかと聞かれたので、その……ずっと傍にいたいと思っています、って答えました……」
「ほう。……他には?」
「あの……」
克哉は耳まで真っ赤になりながら、それでも御堂をじっと見つめる。
その目は欲情と愛情にすっかり潤んで、今にも涙が零れそうになっていた。
「オレは、その人のことが……大好きですって……」
初めて告白されたときのような、必死な想いが伝わってくる。
克哉の声に、言葉に、表情に、たまらない愛しさを感じた。
御堂は思わず身を屈めて克哉を抱き締める。
「……ありがとう、克哉」
自然とそう口にしていた。
恋愛は綺麗な感情ばかりではない。
苦しかったり、苛ついたり、腹が立ったりもする。
それでもまた愛しさが勝って、こうして抱き締め合う。
それらの全てが幸せなのだと感じる。
そして自分の世界にそんな幸せを与えてくれる存在は、ただ一人だけだ。
「孝典さんっ……」
克哉もまた御堂の首に腕を回してしがみついた。
そのままソファの上まで抱き上げられ、座っている御堂の上に跨る格好になる。
「克哉……私も君が好きだ。心から」
「孝典、さん……」
そこでようやく御堂も服を脱いで、互いに肌を晒しあった。
少しずつ克哉の腰が落とされ、御堂の屹立が後孔に埋められていく。
ひくひくと痙攣を繰り返しながら飲み込んでいくそこは熱く狭く、一息に突いてしまいたくなると同時に、出来るだけゆっくりと長く味わっていたいとも思わせるものだった。
奥へ行くほどに熱は上がり、克哉の腰が次第にもどかしげに揺れ始める。
このときの克哉の表情が御堂はたまらなく好きだった。
これから訪れるであろう快楽を求めて止まない目をしながら、それでもなお乱れることを恥らうような顔をする。
上気した頬と、濡れた唇が酷くいやらしい。
あと少しで最奥に辿り着くというところで、御堂は一気に腰を突き上げた。
「あ、はあッ……!!」
克哉は背中をしならせて嬌声を上げる。
思わずいきかけたのか、びくりと跳ねた克哉の屹立を御堂は咄嗟に握り締めた。
「うぁっ、や、あぁっ……!」
「まだイくな」
「ん、うぅっ……」
苦しそうにふるふると首を振りながら、克哉は射精をなんとか堪えているようだった。
御堂は片手で克哉の屹立を握り締めたまま、そして片手で克哉の腰を支えてその身体を揺さぶる。
御堂の屹立を咥え込んだ克哉の後孔はぎちぎちと締め付けをきつくしながら、内部をいやらしく蠢かせていた。
「たか、のり、さん……っ」
「まだ入れたばかりだぞ」
「だ、って……!」
早くイきたいのか、克哉は御堂にしがみついたまま激しく腰を揺らす。
このままでは先にいかされかねないと、御堂は目の前にある克哉の首筋に軽く歯を立てた。
「や、あッ……!」
ぶるりと大きく克哉の身体が震えて、鳥肌が立つ。
ついでに腰に添えていた手で背中をすうっと撫でてやると、とうとう克哉は泣き声のようになった。
「や、だ……ダメ……もう、イきたい……! 孝典さん……!」
「駄目、だ……もう少し……」
克哉の屹立は御堂の手の中で今にも弾けそうに脈打っていた。
それでもまだ繋がっていたい御堂は決して手を緩めようとしない。
見ると克哉は声を出すのを堪えているのか、唇をきつく噛んでいた。
以前にも自分はセックス中の声が大きいのではないかと気にしていたが、それは今も変わらないようだ。
「克哉……キスを」
「あ……」
繋がったまま唇を重ねると、克哉の後孔がきゅうと締まるのが分かった。
キスをしていては声を我慢することは出来ない。
夢中で舌を絡め合いながらも、御堂が突き上げるたびに克哉の喉の奥から声が漏れた。
可愛らしい克哉。
我慢すればするほど、かえって御堂を煽っていることに気がついていないのか。
羞恥心を捨てきれないまま、それでもどうしようもない快楽に翻弄されて泣きそうになっている克哉の様子はいつでも御堂を悦ばせた。
きっとこれから何度身体を重ねても、それは変わらないのだろう。
彼が最も自分を曝け出し、求め、素直になる瞬間を御堂はこよなく愛していた。
「克哉……イっても、いいぞ……」
「は、あ……孝典、さん……イく……出るっ……! あ……あぁッ……!!」
「くっ……!」
御堂は握り締めていた克哉の屹立を激しく扱いた。
その瞬間、克哉の全身が強張り、先端からびゅるりと精が噴き出す。
熱い内壁は御堂のものにぴったりと吸いつき、後孔がその根元を締め付けた。
その快感に御堂もまた吐精する。
幾度も跳ねる身体をしっかりと抱き締めあいながら互いの欲望を解放すると、二人はもう一度唇を重ねた。
「……克哉」
「はい……?」
「私は嫉妬深いから、同じようなことがあればまた機嫌を悪くするだろう。事情を知っていても、きっとそれは変わらない。それでもいいか?」
「はい……!」
克哉は嬉しそうに笑いながら答える。
それからすぐにまた心配そうな表情になって尋ねた。
「あの、オレも、孝典さんのこと信じているのに、それでもすぐ不安になったりしてしまうと思うんですけど……いいですか?」
「駄目だ」
「ええっ?!」
即答されて克哉がショックを受けたような顔をする。
それを見て御堂は思わず吹き出した。
「冗談だ。不安になるのは構わない。だが……それで私と距離を置くのは許さない。分かったな?」
「はい!」
克哉は子どものような笑顔を浮かべて御堂に抱きつく。
その克哉を抱き締め返しながら、御堂は改めて克哉への想いを強くしていた。







数日後。
自分の執務室へ向かう途中だった御堂は、前方に野見山が歩いているのを発見した。
「野見山君」
後ろから声を掛けると、野見山が立ち止まって振り返る。
「御堂部長。おはようございます」
「ああ、おはよう。ところで君に少々相談があるんだが……」
「えっ、相談ですか……?!」
御堂がそう切り出した途端、野見山の顔色がさっと変わる。
そして何故かじりりと後ずさった。
「今夜、時間は空いているか?」
「え、ええと、その、ですね……」
野見山は更に後ずさる。
「君さえ良ければ、なんだが」
「も……申し訳ございません!!」
そこで野見山は唐突に頭を下げた。
「今夜はちょっと予定が入っておりまして……あっ、ちょっと、明日も……しばらく忙しいものですから無理かなぁ……」
「……そうか。残念だが、それなら仕方が無いな」
「はっ、はい! 本当に申し訳ございません! それでは、失礼致します!」
そう言って、野見山は逃げるように去っていってしまう。
なんだか挙動不審に見えたのは気の所為だろうか。
そこへ克哉が現れて、二人は並んで歩き始める。
「今走っていったの、野見山さんですよね? あの話、したんですか?」
「ああ。だが、都合が悪いらしい。せっかくこの間の詫びにと思ったんだがな」
「そうなんですか……。残念ですね。内河さんがセッティングしてくれる合コンなら、きっと楽しいでしょうから」
「そうだな。あいつはそういうのは得意だからな。一人ぐらい増えても構わないというから野見山君をと思ったんだが……仕方あるまい。 ところで、原田君のほうはどうなったんだ?」
「あっ、それがようやく二人で飲みに行く約束を取り付けられたみたいなんです。そこからどうなるかは分かりませんけど……」
「そうか。それは一歩前進だな」
「はい」
そんな話をしていると、不意に克哉が足を止めて御堂のスーツの袖口を引いた。
「……どうした?」
二人が歩いている廊下には今は誰もいないが、克哉がこんな場所でこんなことをするのは珍しい。
不思議に思いながら、御堂は克哉に少しばかり顔を寄せる。
すると―――。
「内河さんの合コン……孝典さんは行ったりしないでくださいね」
「っ……!」
拗ねたようにねだる克哉に、不覚にも心臓を鷲掴みにされる。
気づいたときには御堂は、そのまま克哉の頬にキスをしていた。
「たっ……! ちょ、あ……って、ええっ……?!」
克哉は真っ赤になった頬を抑えながら、動揺のあまりに言葉にならない言葉を発している。
「そんなもの行くわけがないだろう。……君が悪い」
「え、そ、そんな……!」
御堂はそれだけ言い捨てると、克哉を置き去りにして足早に執務室へと向かった。
そうだ、分かった。
全て克哉が悪いのだ。
克哉が可愛すぎるからいけない。
だから好きになりすぎて、ときに自制心を失ってしまう。
克哉はいつも自分が嫌われないかと心配しているけれど、どうすれば少しでも嫌いになれるのか教えてほしいぐらいだ。
(私としたことが、なんという……)
こんな悩みは誰にも相談出来るはずがない。
誰にも相談出来ないけれど、誰にも解決してほしくないとも御堂は思っていた。

- end -
2013.02.22

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