Classical

IN VINO VERITAS

緩く開いた両足の間で、見慣れた薄茶色の髪が揺れている。
その髪を撫でてやりたかったのに、動かそうとした手は左右の手首を後ろでひとつに拘束されて自由を奪われていた。
(何が起きている……?)
自分がソファに腰掛けたままであることまでは理解出来たが、それ以上は考えようとしても頭が働かない。
脳の代わりに、まるで泥でも詰まっているかのようだ。
下半身からは、じゅぷ、じゅぷ、という粘着質な水音が間断無く聞こえてくる。
その音と薄茶色の髪が揺れるリズムはまったく同じだった。
「……ん、く……」
鼻から抜けるような甘い声が漏れると同時に、その動きがぴたりと止まる。
その途端、身悶えしたくなるほどのもどかしさが全身を襲った。
止めないでくれ。
身体が熱くて熱くて堪らないんだ。
もっと吸って、舐めてくれ。
全てを搾り取ってくれ。
しかし足元に跪いていた彼は猛ったそれから唇を離すと、蒼い瞳でこちらを見上げてうっとりと微笑んだ。
「孝典さん……美味しい……」
濡れた唇から赤い舌を覗かせながら呟いた克哉に、御堂は軽い眩暈を覚えた。







深い青色をした瓶から、無色透明な液体がグラスに注がれていく。
籠目模様の刻まれたペアの切子グラスは、今夜初めて使うものだ。
日本酒は滅多に飲まないというのに、細工の美しさと切子にしては珍しい薄墨色を克哉が気に入ったようだったので半年ほど前に購入した。
それ以来、長らく食器棚の飾りにしかなっていなかったのだが、今日ようやく本来の役目を果たせることとなったのだ。
互いのグラスに酒が満たされ、それを手に取る。
揺れる水面と硝子に照明が反射してきらきら光るのを、克哉もまた瞳を輝かせながら見つめていた。
「綺麗ですねぇ……」
恍惚の表情を浮かべ、溜息交じりに呟く。
一方の御堂は、まだ飲む前だというのに既に頬を上気させている克哉が可愛らしくて、そんな克哉の顔ばかりを見つめていた。
「確かに綺麗だな。……香りも悪くない」
グラスに鼻を近づけると、柔らかで落ち着いた香りがする。
それを見て、克哉も御堂を真似た。
「本当ですね。ちょっとフルーティな感じ……?」
「そうだな。味もいいといいんだが。……では、乾杯としようか」
「はいっ」
乾杯、と互いに言いながらグラスを掲げ、口元に運ぶ。
幻の酒と名高いそれをいよいよ味わうと、二人はしばらく無言になってしまった。
「……」
「……」
なんと表現すれば良いのだろう。
日本酒としては辛口の部類に入るのだろうが、その一言では到底済ませられない味だ。
奥深く、まろやかで澄んだ味わいが、ふっくらとした香りと共に口内に広がり、喉をすうっと滑り落ちていく。
その上品さと優しさ。
今までに経験したことのない味わいに思わず御堂が唸っていると、克哉がさきほどと同じように瞳を輝かせながら言った。
「綺麗な味……」
それはグラスを見つめていたときとほぼ同じ言葉だったが、まさしくその表現こそがぴったりだと思わされる味だった。
克哉の素直な呟きに御堂も頷く。
「ああ、その通りだな。これは驚きだ」
「はい、オレもびっくりしました。すごく美味しい……。それに、なんとなくワインに近い味のような気がします」
「そうかもしれないな。ここの蔵元はワインの醸造法を日本酒に活かそうと試行錯誤して、その結果生まれたのがこの酒らしい。 だから我々も気に入るだろうと、あいつも思ったそうだ」
御堂はもう一度グラスに口をつける。
これを送ってきた人間のことを思い出すと忌々しい気持ちになるが、この酒が素晴らしい逸品であることには間違いない。
酒に罪は無いのだから、遠慮なく楽しませてもらおうじゃないか。
そんな複雑な感情が顔に出てしまっていたのか、克哉がクスクスと笑いを漏らす。
「本城さんもマメですよね。いつまでもそんなに気を遣わなくていいのに」
「冗談じゃない。これぐらいで許されると思ったら大間違いだ。君は甘すぎる」
それでも克哉は笑い続けている。
本当は御堂がとうに本城を許していると分かっているのだろう。
罪を償い、薬からもきっぱり足を洗った本城は、あれ以来二人への中元歳暮を欠かさなくなった。
彼の軽薄なイメージからは程遠い行為だったが、本人は罪滅ぼしのつもりなのだろうから御堂も文句を言いつつ毎回受け取っている。
この酒も今年の歳暮兼、克哉への誕生日プレゼントとして本城から贈られてきたものだった。
今では時々連絡を取り合うこともあるし、ワインバーでの集まりに顔を出すのも許してやっている。
それでも隙あらば克哉に馴れ馴れしくするので、このマンションへの出入りだけは絶対に許可するつもりはなかったし、だからこの酒も克哉の誕生日当日ではなく、わざと日をずらして年が明けてから飲むことにしたのだった。
「言っておくが、この酒のこともあまり誉めるんじゃないぞ。すぐに調子に乗るからな」
「はい、分かりました」
御堂が釘を刺すが、克哉は本気にしていないのかニコニコと笑ったまま流すような口調で答える。
この警戒心の無さに今年もやきもきさせられるのだろうなと、御堂は心の中で溜息をついた。



つまみの刺身も美味く、酒はどんどん進んでいく。
克哉の機嫌もますます上々となっていった。
「こういう静かなお正月もいいですよね。孝典さんと一緒だし、お酒もお刺身も美味しいし、オレ幸せです」
「そうだな。私もだ」
「本当ですか?」
「何故、疑う? 当たり前だろう」
「……良かった」
わざわざ言葉にしなくとも分かるぐらい、克哉はずっと幸せそうな笑みを浮かべている。
彼のそんな様子を見ているだけで、御堂も幸せになった。
そうこうしているうちに、気づけば瓶に残った酒も僅かになっている。
克哉のことだ、もう少し飲むだろう。
「さて、これも残り少なくなってきたが……。次はどうする? ワインでいいか? それともウィスキーにするか?」
「えっ、もうですか?! うわぁ……もう少し大事に飲めば良かった……」
「いいんじゃないか。どうせなら一気に空けてしまったほうがいい。勿体ないとか言っていると、結局飲みそびれるからな」
「そうですか……? うん、そうですよね! 飲んじゃいましょう」
ころころと表情を変える克哉が可笑しくて、御堂は思わず笑ってしまう。
こんな顔が見られるなら、今夜は好きなだけ飲ませてやりたいと思った。
「せっかくの休みだ、気が済むまで飲めばいい。たまにはいいだろう」
「孝典さんは?」
「ああ、君が飲むなら勿論つきあうが……。だが、私は君ほどは強くないからな。君に介抱してもらうことになっては困る」
「オレ、孝典さんが酔ってどんな風になっても大丈夫ですよ! というか、そういう孝典さんも見てみたいです」
「私は見せたくないな。だが、君のほうが先に酔い潰れる可能性も捨てきれないと思うが」
「……オレが酔ってとんでもないことをしでかしたら、オレのこと嫌いになりますか?」
「まさか。他の奴だったら許しがたいが、君なら話は別だ。それに外ならともかく、ここで潰れてもたいした問題は起きないだろう」
「じゃあ、どちらかが潰れるまで飲んでみますか?」
「……随分と私に不利な勝負だな」
それは酒の席での単なる軽口の応酬に過ぎず、別に本気で勝負をしようと思ったわけではなかった。
克哉のほうが酒に強いことは分かりきっていたし、潰れるまで飲むなどという飲み方は好きではない。
ただ今の自分がどれぐらい飲めるのか確かめてみたいという好奇心があったのは事実だし、自宅で飲んでいるという安心感もあった。
なにより御堂は本当に酔ってしまった克哉を見てみたかったのだ。
泣き上戸や笑い上戸ぐらいならいいが、絡んだり暴れたり、性質が悪いとキス魔になったり、脱いでしまったりする者もいると聞く。
どれだけ飲んでもほろ酔い程度にしかならない克哉が、本気で酔ったときにどうなるのか。
普段の克哉からは想像も出来ないような言動が見られるのではないかという下心と、 これは彼の恋人としてきちんと確認しておかなければならないという妙な使命感さえ御堂は抱いていた。

とにもかくにも酒ならば幾らでもある。
身体に悪い飲み方をさせるわけにはいかないから、つまみも十分に用意した。
明日はまだ休みだから、どんなことになっても概ね大丈夫だろう。
こうして二人の酒盛りが改めて始まった。
夜はまだ長い―――はずだった。







身体に妙な違和感があった。
何処となく息苦しくて、関節が軋むような微かな痛み。
それなのに下半身からはぞくぞくするほどの快感が立ち上ってくる。
重い瞼をなんとかこじ開ければ、ぼやけた視界の中にあったのは見慣れた部屋の光景だった。
スタンドのオレンジ色の灯りしかついていない部屋は酷く薄暗かったけれど、それでもそこが自宅のリビングであることはすぐに分かった。
それにしても、おかしい。
確かダイニングで克哉と酒を飲んでいたはずではなかっただろうか。
いったいいつの間にリビングに移動したのだろう。
(……克哉は何処だ?)
仰け反っていた上半身を起こそうとしたとき、初めて自分が自由を奪われていることに気づいた。
両手を後ろで一纏めに拘束されている。
驚いて首だけを動かして周囲を見てみれば、緩く開いた両足の間に薄茶色の髪の毛が揺れていた。
「か、つ……」
名を呼ぼうとした声は掠れて消えてしまったけれど、足元にいた克哉の動きはぴたりと止まった。
何をしている?
何をしていた?
呼びかけに克哉はゆっくり顔を上げると、現状が把握出来ずに戸惑っている御堂に向かってうっとりと微笑んだ。
「孝典さん……美味しい……」
吐息混じりに囁いて、濡れた唇を紅い舌が舐める。
その妖艶さに中てられたのか、御堂は軽い眩暈を覚えた。
いったい何が起きているのだろう。
御堂はリビングのソファに座った姿勢で、シャツのボタンを全て外され、だらしなく胸を肌蹴ていた。
ズボンも下着も身につけてはおらず、それらは一緒に床に放り出されている。
無理に首を捻って後ろを見てみれば、どうやら手首はベルトで縛られているらしい。
そして両足の間で跪いている克哉は―――全裸だった。
「克哉……これは、いったい……」
「……」
尋ねようとするも、克哉は何も聞こえていないかのように再び御堂の屹立に唇を寄せる。
愛おしそうにキスを繰り返し、舌を這わされ、御堂は快楽に流されないようにするため必死だった。
「……っ…克哉……待ってくれ……どういうことなんだ、これは……」
「……」
「克哉……っ!」
「……?」
少し強めに呼ぶと、ようやく克哉が反応を見せる。
しかし、それでも唇だけは離そうとしなかった。
「どうしたんですか、孝典さん……?」
「だか、ら…っ……君は、何をして……」
「……孝典さんにお礼をする、って言ったじゃないですか」
「お礼……?」
「はい。いつも孝典さんにいろいろしてもらってるから……今日はオレが孝典さんにいろいろしてあげたいなと思って」
話している間も、克哉の舌は絶え間なく御堂の屹立を舐めている。
甘くて美味しいアイスキャンディーでも味わっているかのように、丁寧に、執拗に。
そのせいで舌足らずな口調になりながらも、決して口淫をやめようとはしない。
もう随分としゃぶっていたのだろうか、克哉の口から溢れた唾液で、御堂の下肢からソファの座面はぐっしょりと濡れていた。
「そう、だったのか……しかし…何故、手首を?」
「え? だって……」
克哉が蕩けそうな笑顔で言う。
「オレも孝典さんに縛られると嬉しいから……」
「……っ」
御堂の背筋にぞっと冷たい何かが走った。
よく見ればテーブルの上には幾つものグラスやワインのボトルが並んでいる。
そういえば途中でダイニングからリビングに移動したような気が……。
いったい、いつから記憶が曖昧になってしまったのだろう。
分からない。
しかしひとつだけ確かなのは、きっと克哉は酔っているのだということ。
それも、かなり。
「克哉、その、君は……」
「孝典さん……」
そのとき突然、克哉が御堂の言葉を遮るようにすっと立ち上がった。
何も身に着けていない克哉のすっかり硬くなったものが、ちょうど御堂の目の前に来る。
それは早く触れて欲しいとでも言うように、ひくひくと震えながら先端を濡らしていた。
「孝典さん……オレ、もう我慢出来ません……オレのも…舐めて、くれませんか……?」
「克哉……」
御堂が視線を上げると、克哉はいまにも泣き出しそうな顔で御堂を見下ろしていた。
行為自体は普段の克哉からは考えられないほどに積極的で卑猥なものだったが、恥じらうあまりに泣きそうになっているところはやはりいつもの克哉だ。
拒む理由は無かったが、手の拘束だけはなんとかしてほしかった。
「克哉、その前に手を……」
「ダメ……ですか……?」
克哉は更に泣きそうな表情になる。
ここまで懇願されれば黙って受け入れるしかない。
「……ああ、分かった」
「良かった……」
御堂が了承すると、克哉はほっとしたように微笑む。
それから自分の熱に手を添えて、ゆっくりと御堂の口内に含ませた。
「あっ……いい……」
「っ……」
御堂は口腔を満たしてくる克哉の屹立に舌を絡ませる。
先端を円を描くように舐め、舌先で小孔を突けば、その熱はびくびくと脈を打った。
克哉の感じる場所ならすべて知っている。
何処を舐めて、何処を吸って、何処に歯を立ててほしいのか。
だから御堂はそれを的確に実行していった。
やがて克哉が遠慮がちに腰を揺らし始めると、御堂も自ら顔を動かして克哉のそれを熱心に愛撫する。
頭上から克哉の乱れた荒い呼吸が聞こえてきて、興奮を煽る。
唾液が溢れて顎を伝い、部屋に水音が響きだす。
「あっ……あ、はあっ……!」
やがて克哉は左手を胸に、右手を自身の後孔へと運んだ。
前を御堂にしゃぶられながら、胸の尖りを弄り、後孔へと指先を埋める。
「あっ…! いい……! 気持ち、いい……!」
立ったままの克哉の膝ががくがくと震えだす。
感じる場所の全てを刺激されて、克哉は悦びに身をくねらせていた。
「あっ、いい……もう、出ちゃ、う……孝典さん……!」
克哉の屹立が硬さを増す。
御堂は唇を窄めて、それを一際強く吸った。
その刺激に屹立は口内でどくんと大きく跳ねて、いまにも射精するかと思ったのだが―――。
「やっ……あ…あぁっ……?!」
しかし御堂はいきなり顔を引いて、克哉の屹立から口を離した。
あと少しというところで放り出された克哉はわなわなと震えながら、半泣きの声を上げる。
「あ、なんで……なんで……」
「君ばかり良くなるのは、狡いんじゃないか?」
克哉の精を口で受け止めることぐらいは、なんの抵抗も無い。
けれど、一方的に快楽を貪られるのはやはり性に合わなかった。
それに……克哉のいつも以上に淫らな姿を見せつけられて、御堂自身も弾けそうなほどに昂ぶっていたのだ。
いい加減に主導権を取り戻したい。
そして、克哉を激しく貫きたい。
しかし酔って我を失っている克哉はあろうことかソファに乗り上げると、そのまま御堂の上に跨ろうとした。
「……だったら、一つになりましょう? ね?」
「克哉、なにを……!」
「んっ……」
克哉は自ら後孔を開いて、御堂の屹立の先端をそこに宛がった。
そしてゆっくりと腰を落としながら、徐々に御堂を飲み込んでいく。
「かつ、や……」
「あっ……孝典さんが…入って、くる……」
これでも確かに快楽はある。
けれど、欲しいものはこれじゃない。
与えられるばかりでは満足など出来ない。
いくら克哉が普通の状態でないとはいえ、もう限界だった。
「克哉……!」
御堂は低い声で、尚且つ冷酷な口調で克哉の名を呼んだ。
途端、膝の上の克哉はびくりと跳ねて動きを止める。
「克哉……私の手を、解きたまえ」
「孝典さん……」
「克哉。言うことを聞くんだ」
「は、い……」
その有無を言わせぬ絶対的な命令に、克哉は怯えた目をしながらも御堂の後ろに手を回してベルトを解く。
「ごめ…なさい……孝典さん……」
御堂を怒らせ、嫌われてしまったとでも思ったのだろう、克哉は小さく震えながら俯いた。
御堂はようやく解放された手でそんな克哉の頬に触れると、冷たい声のままに囁く。
「克哉……君は誰のものだ?」
その問い掛けに、克哉ははっとしたように顔を上げた。
「あ……オレは、孝典さんの……ものです……」
「そうだな。では、君は私の言うことを聞かなければならない。分かっているな?」
「はい…ごめんなさい……」
御堂が克哉に対してこんなにも威圧的な態度を取ったのは久し振りだったかもしれない。
恋人同士になる前―――克哉に酷いことをしていた頃は、いつもこうだった。
互いの立場はあくまでも支配する者とされる者であり、克哉に一切の選択権を認めてはいなかった。
けれど、今は違う。
克哉の瞳は怯えの色を浮かべていながらも、その奥には確かに甘い期待を潜ませている。
これから自分に何が起きるのか、よく分かっているのだろう。
この従順で、いやらしい恋人が御堂には堪らなく愛おしい。
やがて克哉は御堂の上から下りるとソファの背もたれに手をつき、自ら尻を突き出して言った。
「孝典さん……オレに、お仕置き…してください……」
「ああ……そうだな」
期待通りのおねだりに、御堂が薄く笑う。
彼は酔っていても、自分がすべきことだけは決して忘れていなかった。
御堂は克哉の後ろに立ち、白く滑らかな双丘に手を置く。
そして御堂を待ちわびてひくついている後孔に、己の熱を一息に突き立てた。
「ひっ…! あ、あぁ……ッ!!」
「克哉……!」
痛みと快楽が綯い交ぜになって、悲鳴のような声が上がる。
御堂は克哉の腰を抱えると、酔って体温の高くなった体の奥を滅茶苦茶に突き上げた。
内壁を擦り上げる熱に何もかも蕩けそうになりながら、欲望のままに互いの身体を貪る。
克哉の背中が弓なりに反り、肌に汗が浮かんだ。
「は、あぁ……もっと……もっと、酷く…して……!」
「かつ、や……」
音が出るほどに腰を打ちつけて、最奥を穿つ。
我を忘れて交わる姿は、まるで飢えた獣だ。
けれど快楽に溺れる克哉はどんなときよりも綺麗に見えると御堂は思った。
もっと乱れさせて、もっと啼かせたくなる。
ひたすらに、ひたむきに求められたいと願う。
「んっ、あっ、あぁっ……はっ……!」
御堂の律動は激しさを増し、克哉の喘ぎ声も一層高くなる。
時折、御堂の掌がぴしゃりと双丘を叩くと、そのたびに後孔は御堂のものをきつく締め付けた。
「叩かれて感じているのか……? さすがだな、君は」
「や、ぁ……ごめん、なさい……ごめんなさい……」
「謝ることはない。やはり君は最高だ……」
克哉の屹立からは透明な蜜がとろとろと糸を引いて零れている。
もうこれ以上は我慢出来そうにない。
それはお互い、同じだった。
「あっ、いく、孝典さん……出ちゃう……」
「いけ……私、も……」
「イく……ほんと、に……あっ、あ、あ……ん、ああぁッ…―――!!」
「はッ……」
克哉の後孔が御堂を一際きつく締め付けた瞬間、御堂の下肢が大きく震えた。
克哉の中に熱い精が迸り、同時に克哉の屹立からも欲望が溢れてソファの上に飛び散る。
全てを吐き出してしまうとそのまま克哉はがくりと膝をつき、御堂もその背中に力無く覆い被さった。
「克哉……」
御堂は克哉を抱き締める。
酔いはすっかり醒めていたはずなのに、頭の中も身体の奥もまだ燃えるような熱を湛えていた。







頭が痛い。
身体も痛い。
そして、寒い。
「ん……」
先に目を覚ましたのは御堂だった。
とはいえ、それほど長く眠ってはいないはず。
ソファではさすがに熟睡出来なかったようだ。
「……」
克哉は毛布に包まり、御堂に寄り添うようにして眠っていた。
あのあとそのまま眠ってしまった克哉を寝室まで運ぶことは出来ず、仕方なく毛布をこちらに持ってきて眠ったのだった。
(それにしても……)
昨夜の克哉にはいろいろと驚かされた。
いやらしく積極的になるぐらいは構わないが、まさか縛られるとは思わなかった。
克哉にしてみれば悪気など微塵もなく、自分がされて嬉しかったことを同じようにしてくれただけなのだろうが、生憎御堂にはそういう趣味は無い。
やはり縛られるより縛るほうが好きだ。
とにかく克哉にあまり飲ませすぎるのは危険だということがよく分かった夜だった。
「……孝典、さん……?」
やがて克哉が目を覚ました。
瞼が半分しか開かず、それでも御堂の顔を見つけるとふにゃりと微笑む。
「おはよう……ございます……」
「ああ、おはよう……」
「えっと……」
何も分かっていないらしい克哉はゆっくりと身体を起こす。
そして自分の姿に驚いていた。
「あ、あれ……? なんで、オレ……裸……? あれ?」
「克哉……」
さて、克哉にどう説明すればいいのだろう。
起きたことをすべて話して聞かせるべきか、それとも彼が落ち込みそうなことは話さないでおくべきか。
「えっと、オレ……まさか、何かやらかしたんでしょうか……?」
克哉は既に不安になっている。
御堂は咄嗟に縛られた痕の残っている手首を克哉の視界から隠した。
「……克哉。とにかくシャワーを浴びてこないか? それからコーヒーでも飲んで、部屋を片付けて……話はそれからにしよう」
「は、はい……分かりました」
やはりきちんと説明してやらなくてはいけないだろう。
昨夜、二人の間にどんなことがあったのか。
酔った克哉がどう変わったのか。
そして克哉が何をしても、克哉に何をされても、御堂が克哉を愛する気持ちに少しも変わりはないということを。
「克哉……心配するな。大丈夫だ」
「孝典さん……」
御堂が励ますように頬にキスをすると、克哉はようやく微笑む。
きっと、あれもまた彼の一面なのだろう。
もしかすると彼の中にはまだまだ自分の知らない克哉がいるのかもしれないと思うと、嬉しいような怖いような、複雑な気持ちになる御堂だった。

- end -
2015.01.28



←Back

Page Top