Classical

Bad Medicine

御堂は休日であっても、平日と同じ時刻に起床する。
だから今日も土曜日で仕事は休みだというのにも関わらず、 克哉が目を覚ましたときには既に御堂はベッドにいなかった。
神経質なほど生真面目なところは御堂らしいとも思うが、少し心配にもなる。
進めているプロジェクトが佳境に入っている為、二人とも今週は毎日のように帰宅が深夜近かったのだ。
その所為か、今朝は克哉も起きるのが少し遅くなってしまった。
自分の寝坊を正当化するつもりはなかったが、 御堂も今日ぐらいはゆっくり休めばいいのにと思いながら、克哉は寝室を出てリビングに向かった。

「おはようございます、御堂さん」
克哉が声を掛けると、いつものようにソファで新聞を読んでいた御堂が顔を上げる。
「ああ、おはよう」
「すみません、起きるのが遅くなってしまって……」
克哉が詫びると、御堂は新聞を畳みながら言った。
「いや。私も今朝は少し遅かったからな」
「そうなんですか?」
「ああ」
その言葉に、克哉は少しだけほっとする。
遅く起きたことに対する罪悪感が軽くなったからではなく、 御堂が少しでも体を休めてくれたことが分かったからだ。
そのとき、キッチンから嗅ぎ慣れない匂いがしてきたことに気づいて、克哉はそちらへ行ってみた。
「あれっ? 今日は……」
特別決めたわけではなかったが、朝食は先に起きたほうが用意することに自然となっていた。
御堂が用意する朝食は大抵パンなのに、今日はコンロに鍋が置いてある。
ぐつぐつと微かに音を立てているそれの蓋を取ってみると、中にはお粥が入っていた。
「珍しいですね。今朝はお粥ですか?」
尋ねながら、傍にあったおたまで中を少し掻き回してみる。
もうほとんど出来上がっているようだ。
克哉がコンロのスイッチを止めると、御堂もキッチンに入ってきた。
「ああ。どうも少し熱があるようだ。つきあわせて悪いが、今朝はこれで我慢してくれ」
「……は?」
御堂があまりにも平然と説明したので、一瞬わけが分からなくなる。
数秒置いて、ようやくその言葉の意味が頭に入ってきた途端、克哉は慌てた。
「ええっ?! ね、熱って」
「大丈夫だ。たいしたことはない」
「ちょ、ちょっと待ってください」
克哉は御堂の額に触れた。
かなり、熱い。
「ぜんぜん、たいしたことなくないじゃないですか!」
「そうか? 測ってないから分からんな」
「とにかく、こんなことしてる場合じゃないですよ。休まないと……」
「いや、大丈夫だ」
「御堂さん!」
おろおろする克哉に構わず、御堂は食器棚からお椀を取り出そうとする。
そこで克哉は、キレた。
「……ダメです!」
断固とした口調で言って御堂の腕を掴むと、寝室に連れ戻すべく、その腕を引っ張る。
御堂は引きずられるようにして、キッチンを離れるしかなかった。
「御堂さんは寝ていてください。あとはオレがやりますから」
「だから、私は大丈夫だと……」
「ダメです!」
克哉は足を止めると、御堂の目を真っ直ぐに見つめながら言いきった。
こんなに強気に出るとは珍しいとでも思われているのだろう、御堂は驚いた顔で克哉をじっと見返している。
けれどすぐに克哉は悲しくなって、しゅんと項垂れてしまった。
「お願いですから、寝ていてください。なんの為にオレがいるんですか……?」
御堂が隙の無い人間であることは分かっている。
誰かに頼ったり、甘えたりするタイプではないことも。
しかしいくら自分が頼りないとはいえ、病人に朝食の準備をさせるほど情けない男のつもりはない。
こんなときぐらい、あてにしてくれてもいいはずだ。
御堂はもう、ひとりではないのだから。
唇を噛みながら俯く克哉に、御堂は僅かに苦笑した。
「……分かった。君の言う通りにしよう」
その返事に、克哉はようやく安堵の笑みを見せた。

ベッドの傍で御堂から体温計を受け取ると、その数字を見て克哉は目を丸くした。
「8度6分……! 御堂さん、辛くないんですか?」
「まあ、いつもよりは辛いような気がするな」
「気がする、って……」
まるで他人事のように言う御堂に、克哉は溜め息をつく。
これだけの高熱で、こんなにも平然としていられる理由が分からない。
本当は辛いのに無理をしているのだろうか。
それとも自制心が強すぎて、辛さを感じることを体が拒否しているのか。
どちらにせよ、ただごとではない。
克哉はサイドテーブルに置いてあったお粥の椀を、手に取った。
「これを食べたら、薬を飲んで休んでくださいね。でも、本当は病院に行ったほうがいいと思うんですけど……」
「いや、大丈夫だ。さいわい明日も休みだしな。寝ていれば治るだろう」
克哉がどんなに病院に行くことを勧めても、市販の解熱剤を飲めばいいと御堂は言い張る。
土曜日なのだから、午前中に行けば診てもらえるのに……と歯痒かったが、仕方が無い。
諦めて、お椀と蓮華を御堂に渡そうとしたところで、克哉はぴたりと手を止めた。
「ん? どうした?」
受け取ろうとした手が空を切り、御堂は首を傾げる。
「あの……オレ、食べさせましょうか?」
「!! い、いや、いい」
さすがに、それには抵抗があったようだ。
御堂にお椀と蓮華を奪い取られて、またしても克哉はしょんぼりと眉尻を下げる。
それを見ない振りをして、御堂はお粥を口に運びはじめた。
「……それにしても、ちゃんとお休みの日に具合が悪くなるなんて、さすが御堂部長ですよね」
御堂が食べるのを眺めながら、克哉は冗談めかして言う。
「体調管理には気を使っていたつもりなんだがな……。気が緩んだのかもしれん」
「疲れていたんですよ。仕方ないです」
「……君は食べないのか?」
「オレは後でちゃんと食べますから。オレの心配より、自分の心配をしてください」
「……」
どうも今日の克哉には、調子が狂う。
いつもと立ち位置が逆転しているような気がして、御堂はなんだか可笑しくなってきた。
「……御堂さん? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
心配そうな克哉をよそに、御堂はどこか楽しげですらあった。

御堂はお粥を平らげると、克哉に言われた通り、薬を飲んで再びベッドに横になった。
「アイスノンとか、無いんですよね。後でオレ、買ってきますから」
「ああ。悪いな」
「他になにか欲しいものとかありませんか?」
「いや……君は君で好きなことをしていればいい。私のことは心配するな」
「そんな……」
御堂の言葉に、克哉はまたしても顔を曇らせる。
「してほしいことがあったら、なんでも言ってください。オレ……心配です」
「ああ、そうか。それなら……」
どうやら何か頼まれないと、克哉はかえって安心出来ないらしい。
そんな克哉が可愛く思えて、御堂は克哉に手を伸ばした。
「それなら、私が眠るまでここにいてくれ。それだけで、いい」
「そう……ですか?」
克哉はまだ心配そうに、御堂の手を握り締めた。
その熱さに胸を痛めながら、それでもようやく笑みを見せる。
「オレ、ここにいますから。安心して寝てください」
「ああ……ありがとう」
深く考えず口にした頼み事だったのに、克哉の手の温もりは、不思議なほど御堂の心を穏やかにさせた。
そのまま御堂は目を閉じ、今日二度目の眠りへと落ちていった。

薬と十分な睡眠は、思いのほか効果があったようだ。
目が覚めると、朝に比べて随分と楽になっていた。
まだ少し体に怠さは残っているものの、頭もすっきりしている。
どうやら、一時的なものだったようだ。
元々熱以外に目立った症状はなかったから、風邪などではなく、やはり疲れが溜まっていたのだろう。
サイドテーブルの時計を確認すると、もう正午を過ぎていた。
閉じられたままのカーテンから差し込む、柔らかな光で満ちた部屋を、御堂はぼんやりと眺める。
「……克哉」
誰もいないのは一目瞭然なのに、それでも御堂は無意識にその名前を呟いてしまう。
御堂はベッドを出て、リビングへと向かった。

「……克哉?」
しかしリビングにも、克哉の姿はなかった。
それどころか家の中のどこにも、人の気配がしない。
買い物にでも行っているのだろうと思いながら、御堂はソファに腰を下ろす。
「……」
部屋の中は静まり返っていた。
克哉ひとりがいないだけで、ここはいつもよりずっと広く、寒々しく見える。
よくも今までこんな部屋にひとりで暮らしていられたな、とさえ思ってしまう。
暗い部屋に帰ってくることも、ひとりでワインを楽しむことも、あの頃はなんともなかった。
それが当たり前だった。
けれど、今は違う。
克哉の存在がここに無いことが、ひどく物足りなくて、寂しい。
(この私が、そんなことを思うとはな―――)
長い間、寂しいなどと感じたことはなかった。
けれど今、御堂は確かに寂しさを感じている。
寂しくて、克哉が早く帰ってきてくれるのを待っているのだ。
他の誰にも、この寂しさを埋めることは出来ない。
出来るのは、克哉だけだ。
克哉の存在だけが、御堂の心を満たしてくれる。
今まで、そんな風に思える相手に出会ったことはなかった。
自分の変わりように、思わず御堂が自嘲の笑みを浮かべたとき、玄関の開く音がした。
「……御堂さん! もう起きて大丈夫なんですか?」
リビングに入るなり、克哉は驚いた声を上げる。
その両手には、近くのドラッグストアとコンビニの袋がぶらさがっていた。
「すみません。オレ、なに買っていいかよく分からなくて。とりあえずヨーグルトとか買ってきたんですけど、 食べますか? あとは、スポーツドリンクと……」
克哉は忙しなく喋りながら、御堂の隣りに腰掛けて袋を開ける。
それから思い出したかのように、御堂の額に手を置いた。
「……ほんとだ。熱、下がってますね」
「ああ。薬が効いたようだ」
「良かった……」
嬉しそうに微笑んで離そうとした手は、しかし御堂に捕まってしまう。
「克哉……」
「あっ……」
不意に腕に抱き込まれて、克哉は胸を高鳴らせる。
そういえばここ三日ほど、疲れて帰宅したあとはシャワーを浴びてそのまま眠ってしまっていたのだ。
このままでは、マズイことになる。
克哉は慌てて、御堂から離れた。
「あっ、あの、オレ、書き置きぐらいしていったほうが良かったですよね。買い物に行ってきます、って……」
雰囲気を変えようとして克哉が言うと、御堂はクスリと笑いながら答える。
「いや、その必要は無い。君は必ず、私のところに帰ってくるに決まっているからな」
「御堂、さん……」
無条件に寄せられる信頼が嬉しくて、克哉はついうっとりとしてしまう。
やがて御堂の顔が近づいてきて、目を閉じかけたとき、ハッと我に返った。
「ダっ……ダメ、です!」
いきなり突き放され、御堂はむっとする。
「今日はダメばかりだな」
「だ、だって、御堂さんは病気なんですから……」
「ただの過労だ。風邪ではないから、うつらないぞ」
「そういうことじゃなくて」
「熱なら、もう下がった」
「でも、またぶりかえすかも……」
「それでもいい」
御堂は言いきって、再び克哉を抱き締める。
「私にとっては、君が一番の薬だ。だから、気にするな」
「そんな……」
克哉がまだ躊躇っているにも関わらず、御堂は克哉の首筋にキスを落とす。
それだけでぞくりと肌が粟立って、克哉は御堂の腕に強くすがった。
このままでは、本当に流されてしまう。
いくら今は熱が下がったとはいえ、御堂は数時間前まで寝込んでいたのだ。
やっぱり、無理なことはさせたくない。
けれど御堂がしたがっているのなら、それに応えたいとも思う。
克哉は意を決して、御堂の名を呼んだ。
「あ、あの……御堂さん」
「なんだ?」
御堂が顔をあげる。
克哉は倒されかけていた体を起こすと、ソファを降りて床の上に座った。
「あの、御堂さんは、なにもしなくていいです……。オレが……します、から……」
「……克哉?」
克哉は顔を真っ赤にしながら、戸惑っている御堂の足の間に割って入る。
それからウェストに手を掛けると、中から御堂のものを取り出そうとした。
「か、克哉。そんなことは、しなくていい!」
さすがの御堂も、焦って克哉を引き離そうとする。
けれど克哉は退こうとしない。
まだ柔らかいそれを手に取ると、先端に唇で触れた。
「……っ」
頭の上の方で、御堂が息を飲む気配がする。
克哉は差し出した舌を亀裂に捻じ込ませた。
それから唇を被せ、ゆっくりと口に含んでいく。
「かつ、や……」
熱の籠もった声で呼ばれて、克哉は嬉しくなる。
緩々と手で扱きながら舌を絡ませると、それはすぐに硬くなりはじめ、克哉の口内を満たしていった。
「んっ……ん……」
深く浅く咥えながら、克哉は初めて御堂に『接待』をしたときのことを思い出す。
あのときは本当に辛くて、惨めで、悔しかった。
けれど今は、御堂が悦んでくれることがこんなにも嬉しい。
御堂の為なら、なんでもしたい。
克哉は溢れる唾液が顎や手を濡らすのも構わず、音を立てて御堂のものを舐め続けた。
「…ん……んっ……ぅ…」
やがて御堂の指先が、克哉の髪に絡んできた。
そのまま優しく撫でられ、まるでいい子だと誉められているような気持ちになる。
克哉は更に深く御堂を咥え、唇で強く圧迫した。
御堂のものはどくどくと脈打ち、滲んだ雫は苦味となって克哉の口内に広がる。
優しく触れていただけの御堂の手は、いつの間にか克哉の頭を押さえつけるようになっていた。
「……っ…かつ、や……もう……」
切れ切れの吐息と共に呟かれ、克哉はますます強く御堂を吸い上げる。
喉の奥を突かれる苦しさに、涙が浮かんでくる。
揺れる視界の中で御堂の顔を上目遣いに見上げると、熱っぽい視線とぶつかった。
「…克哉………ッ……!」
御堂が顔を顰めた瞬間、口の中に熱い奔流がどっと流れ込む。
びくびくと震える度に喉を突くそれを、克哉は全て嚥下した。
鈴口に残った分まで舐め取り、ようやく唇を離す。
濡れた唇で恍惚とした表情を浮かべている克哉を、御堂は息を弾ませながら見下ろしていた。
「克哉……君は……」
御堂に腕を取られて立ち上がると、克哉は再びソファに腰掛ける。
そのままきつく抱き締められ、克哉もまた御堂の背中に手を回した。
「……嫌では、なかったのか…?」
「え……?」
妙に不安げな声で尋ねられ、その表情を見ようとしたものの、御堂はそれを許してくれない。
更にぎゅうときつく抱き寄せられて、息も出来ないほどになる。
「御堂……さん?」
「あの時のことを……思い出させたのではないかと……」
「……」
やはり御堂も同じことを考えていたらしい。
そして今では、自分のしたことに胸を痛めているのだろう。
克哉は微笑んで、御堂に応えるように強くその背中を抱き締めた。
「オレ……今、すごく幸せなんです。こうして、あなたと一緒にいられることが……」
「克哉……」
その答えに御堂はようやく腕を緩めた。
視線が絡み合い、二人は唇を重ねる。
まだ熱を帯びたままの吐息を交わしながら、幾度も角度を変えてくちづけた。
御堂の手は克哉の背中から腰へと滑り、やがて前へと回る。
股間をそろりと撫でられ、克哉の体が跳ねた。
「ダ……ダメですっ…」
克哉は唇を離し、またしても抵抗する。
本当に頑固だな、と御堂は笑った。
「だが……このままでは辛くないか?」
「……っ」
確かに克哉の中心は、ジーンズ越しにも分かるほど硬く勃ち上がっていた。
さっきから下肢がずきずきと痛むほどだ。
それを御堂に知られてしまったことが恥ずかしくて、克哉は顔を真っ赤にして腰を引く。
「あ、あの……オレは……大丈夫、ですから……」
「ほぉ……」
この期に及んでも、まだ強がりを言う克哉がいじらしい。
けれどそんな克哉を見ていると、御堂はつい意地悪を仕掛けたくなってしまう。
克哉の肩を抱き寄せ、赤く染まった耳朶に唇で触れながら、御堂は出来るだけ優しい声で囁いてやった。
「それなら……自分でしてみせてはくれないか? 今、ここで」
「えっ……」
「出来るだろう?」
耳に舌を差し込まれ、ぴちゃと音が立つ。
克哉は体を細かく震わせながら、必死で理性を繋ぎとめようとしていた。
「む、無理です……出来ません、そんなこと……」
「何故だ? 私に見られるのが恥ずかしいからか?」
「当たり前、です…っ……」
「だが君は、してほしいことがあったら何でも言えと言ったはずだが」
「それはっ……! そういう、こと、じゃなくて……」
「……克哉」
御堂の声が、少し低くなる。
舌先が耳朶から耳の後ろ、首筋へと這っていく。
―――ああ、ダメだ。
もう、逆らえない。
観念した克哉は、そっと自分の下肢に手を伸ばした。
ぶるぶると震える指でベルトを外し、ジッパーを下ろす。
既に先端から滲んだ雫が、下着を小さく濡らしていた。
「…っ……ぁ……」
ひくつく吐息を飲み込みながら、克哉は自分の硬い中心を握り締めた。
羞恥にきつく目を閉じたまま、ゆっくりと上下に扱くと、一気に腰が重くなる。
目を閉じていても、そこに御堂の視線を感じた。
自分の恥ずかしい行為を、御堂に見られているのだ。
それは奇妙な興奮を伴って、克哉の手の動きを速めていった。
「ぁ……んっ……」
克哉は御堂に凭れ掛かるようにしながら、次第に息を荒らげる。
両脚はいつの間にか開き、まるで見せつけるような格好になっていることにも構わず、克哉はその行為に夢中になっていった。
だらだらと零れた透明な蜜が掌を濡らし、淫猥な音を立てる。
本当は、御堂に触ってほしくてたまらなかった。
いつものように、熱く猛ったもので激しく貫いてほしい。
そんなことを思っている所為か、絶頂感はすぐそこまで来ているというのに、なかなか解放することが出来ない。
克哉の欲望は出口を求めて、体の中をぐるぐると駆け回っていた。
「御堂……さんっ……」
涙を浮かべながら、克哉が堪らず助けを求めると、御堂はニヤリと笑った。
「どうした? イけないのか?」
「うっ……」
「……なら、手伝ってやろう」
肩を抱いていた御堂の手が、腰から下着の中に入り込む。
指先が双丘の谷間を降りて、後ろの窄まりに触れた。
「あぁっ……!」
克哉が嬌声を上げる。
御堂の指は焦らすように後孔の周囲を撫で、それからゆっくりと中に入っていった。
「あっ…あ、あぁっ……」
深い侵入を求めるかのように、克哉は半分だけ尻を浮かせる。
完全に御堂に体を預け、激しく手を動かした。
御堂の指が克哉の中を掻き回すと、克哉はびくびくと腰を痙攣させる。
「あっ、あっ、御堂さん……御堂さん……ッ……!」
ようやく達しようとしたその瞬間、克哉は御堂に唇を奪われた。
舌を吸われ、喘ぎも、吐息も、なにもかもが御堂のものになる。
「んっ……ん、うぅっ……」
克哉は御堂の腕の中で、幾度も体を震わせながら精を吐き出していた。
目尻から、涙が零れる。
苦しいのか、気持ちいいのか、もう分からない。
ただ、幸せだった。
それだけだった。

二人はソファに腰掛けたまま、しばらく寄り添っていた。
それからまた克哉は思い出したように、心配そうに御堂の顔を覗き込む。
「あの……本当に、大丈夫ですか?」
御堂が一瞬、なんのことか分からないといった顔をしたので、克哉は苦笑した。
「熱ですよ。もう、本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、そのことか」
「まさか、忘れてたとか……」
「忘れていたな」
呆れて竦めた克哉の肩を、御堂はまた抱き寄せる。
「だから、言ったろう? 君が一番の薬だと」
「……そんなの、困ります」
少し尖らせた唇に、御堂の唇が触れる。
悪戯のようなキスをいつまでも繰り返しながら、二人は微笑み合った。

- end -
2007.11.01



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