05 午前五時
ふと意識が覚醒する。
目を開ける前から、気配でもう朝だということは分かる。
ゆっくりと瞼を上げると、遮光カーテンの隙間からはほんの僅かだけ白っぽい光が漏れていた。
どうも今日は曇っているようだ。
隣りには御堂が眠っている。
御堂はとても寝相がよくて、こんなところにも御堂の真面目な性格が表れているような気がする。
寝息さえもほぼ聞こえないほど静かに眠っているので、たまに不安になって胸に手を置いたりして呼吸を確かめてしまう。
御堂はこんなにもお行儀よく寝ているのに、自分はどうなのだろうかと心配になって御堂に尋ねてみたこともあるが、
とりあえず御堂に迷惑をかけたり、見られて恥ずかしいことになっていたりはしていないようなので安心した。
薄明かりの中、克哉は指先だけで御堂に触れてみる。
腕、肩、髪、頬、唇。
触れているうちに愛しさが募って、今度はそっと髪を撫でる。
こんなことが出来るのはこの時間だけだ。
夜はだいたい克哉が先に眠ってしまうから。
そういえば以前はこうして触れていると、御堂はすぐに目を覚ましてしまっていた。
けれど、今は違う。
ちょっと悪戯にキスをしてみても御堂は目を覚まさない。
それだけ安心して眠ってくれているということなのだろうか。
もしもそうなら嬉しい。
好きで、好きで、好きで。
苦しくなるぐらいに好きで。
激しく求めあっている時間もとても幸せだけど、こうして静かに寄り添っているだけの時間もまた至福だった。
投げ出されている手に指を絡ませると、御堂が微かに声を漏らしながら身じろぎした。
起こしてしまったかと思いきや、御堂の目は開かない。
それどころかそのまま空いているほうの手が伸びてきて、抱き寄せられてしまう。
「っ……」
吐息がかかるほどまでに近くなった御堂の顔を見つめてみるも、やはり御堂は眠っている。
眠っていても、こうして無意識に抱き締めてくれるのか。
宝物を抱えるように、誰にも取られないように、どこにも行かないように。
御堂の腕の中はとても暖かくて、少しだけ苦しい。
でもその苦しさが心地良くて、克哉は微笑んでもう一度目を閉じる。
今日もたくさん好きだと言おう。
今日もたくさんキスをしよう。
けれど今はもう少しだけ、このままで。
午前五時は幸せの時間。
- end -
2017.08.09
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