俺は何故、こんなことをしているのだろう。
目の前にある、まるで産まれたての獣のようなしなやかな肢体。
なだらかに反った背中に覆い被さり、汗ばんだ肌に唇をつける。
「ん……っ…」
吐息混じりの声を洩らし、ぞくりと肌を粟立てる。
俺はそのまま奴の背に圧し掛かり、緩く開かれた両脚の間にそそり立つ雄を握り締めた。
「あぁ…ッ…!」
龍は畳に爪を立て、嬌声を上げた。

嫉妬―――したのだ。
龍閃組と鬼道衆が手を組むことになり、俺達は龍泉寺へと集まった。
そこには龍を昔馴染みのように歓迎する連中がいた。
『ひーちゃん!』
蓬莱寺、と言ったか。
龍が現れた瞬間に見せた、あの満面の笑み。
信頼と友情を、声に、表情に、惜しげも無く溢れさせながら龍を迎えた男。
そうすることが当たり前のように龍の隣りを占める男。
俺は、あの男に嫉妬したのだ。

龍は龍泉寺には残らず、俺達と共に鬼哭村へと戻ってきた。
俺は龍に、何故わざわざこの村へ戻ったのか問い詰めた。
明日にはまた龍泉寺へ向かわなければならない。
ならば、向こうへ残った方が良かったのではないかと。
『俺の居るべき場所は、お前の側だから』
龍はそう答えた。
けれど俺は納得出来なかった。
本当に俺と生死を共にする気があるのなら、その証を見せろ―――。
俺が顎を掴むと、龍はただ黙って目を閉じた。

畳に両手をつき、四つん這いになった龍の身体を後ろから抱き締める。
片方の手で龍のものを扱き、もう片方の手で胸の尖りをきつく抓る。
「あ…は……あっ……」
龍は拳を握り締め、髪を振る。
その髪の先から汗の雫がぱらぱらと飛ぶのが見えた。
「ん……―――ッ……」
俺が自分の昂ぶったものを龍の尻に押し当てると、龍はぶるっと大きく身体を震わせた。
その震えが期待なのか恐怖なのか、俺には分からない。
龍を抱き始めてから、俺はまだ一度も龍の顔を見ていない。
恐怖しているのは―――俺だ。
「龍……」
背骨に沿って舌を這わせる。
その間も、龍の陽物の先から雫を搾り出すように手を動かし続ける。
「あッ、…―――ッ!」
龍はがくんと首を仰け反らせて、慌てて俺の手を押さえ込んだ。
「……どうした? もう、終わりか?」
「……ッ…」
龍は首を振る。
まだだ。
まだ、終わらせるわけにはいかない。
お前が何処まで俺を拒まずにいるか、俺は確かめねばならない。

俺は龍の腰を抱え直し、龍の零したものでぬめった指先を後ろに押し当てる。
その瞬間、龍の身体が緊張に強張った。
「力を抜け……」
きつく締められたままの肉をかき分けて指を挿し入れる。
龍は緊張を解くことが出来ずに、ただ短く息を吐き出しながらそれに耐えていた。
「う……ぐ、ぁ…ハッ……」
「力を抜け……」
もう一度同じことを囁きながら、龍の中を弄った時だった。
「―――ッ!!!」
吸い込むような悲鳴が上がる。
どうやら俺は龍の最も敏感な部分に触れたらしい。
「ここが良いのか?」
今、俺は醜く笑っているのだろうな。
思い当たる場所を何度も指の腹で押してやる。
龍は両手と両脚をがくがくと痙攣させながら崩れた。
「あ…あ…あッ……ア……」
肘と額を畳に押し付け、まるで泣いているかのようなか細い声を絞り出す。
陽物から漏れた雫は畳の上に零れ、糸を引いていた。
堪えきれないといった風に頭を抱え込みながらもびくびくと跳ね上がる腰は、更に激しい快感を求めているようにしか見えなかった。
「天戒…も……う……」
掠れた声で呟いて、俺の指を締めつける。
拳を畳に擦りつけて達するのを堪えている姿に、俺はふと哀れみを覚えた。
本当にこんなことがしたかったのか。
俺は龍を苦しめ、傷つけ、壊そうとしているのではないのか。
「龍……」
しかし、龍は不安な俺の声を遮った。
「もう……イかせて、くれ……」
「……」
哀れみは吹き飛んだ。
俺は指を抜くと再び龍のものを握り、激しく扱き上げた。
「あああぁッッ!! あッ!! てんか…い…ッ!!!」
突然の強い刺激に龍は顔を上げて仰け反る。
俺の手の動きに合わせるように身体を揺さぶり、呼吸を弾ませる。
指に絡みつく蜜が、卑猥な音を立てて溢れる。
「は、ァ―――ッ……!!!」
声は喉に詰まり、龍が大きく喘ぐ。
その瞬間、俺の手の中から勢い良く噴き出した精が、ぱたぱたと音を立てて畳の上に飛び散った。
「あっ……は……はぁ…っ…………」
「龍―――」
俺は解放しきれていない龍のものから無情に手を放し、すかさず己の欲望を突き立てた。
「あ、やッ…ぅ、アぁぁぁ―――ッ!!!」
もう、龍のことを思いやる余裕は無かった。
今の龍には、何が起きているのかほとんど分からないだろう。
あるのはただ、痛みだけ。
それでも俺はきついそこを無理に割って、龍の中に身を沈めた。
「う……ぁ…………」
龍は再びがくりと頭を落とす。
触れると、龍のものは既に柔らかく萎えていた。
それでも俺は構わずに、それを緩く扱く。
「龍……動くぞ」
「……」
返事を待たずに、ゆっくりと抜き差しを始める。
龍は嬌声を上げもせず、時折苦しげに呻いた。
握り締めた拳が震えているのは、痛みを堪えているのに他ならない。
俺は次第に動きを激しくし、龍の中を突き上げた。

拒もうと思えば、お前ならば幾らでも拒めたはずだ。
俺はお前を愛したかったのだろうか、それとも支配したかったのか。
このような行為が、なんの証にもならないことぐらい俺にも分かっている。
それでも、俺の中にある暗闇がお前を求めてやまないのだ。
すまない、龍。
すまない……。

龍の中の奥深く、俺は己の欲望を解き放った。

龍は畳にうつ伏せになったまま、暫く動かなかった。
辺りは酷い有様だ。
脱ぎ散らかしてあった着物を取り、龍の背中に掛ける。
「龍……すまん……」
龍はむくりと身体を起こし、顔を伏せたままこちらを向いた。
咎められても仕方あるまい。
俺は龍に手を伸ばした。
「龍……」
龍は俺の手を振り払った。
俺を睨む龍の睫が僅かに濡れている。
「……馬鹿野郎……っ」
そう呟いて、龍は俺の首にしがみついた。
「龍……?」
「謝ってんじゃねぇよ……」
「……」
まだ熱い体をぴったりと押し付けて、龍は俺の首筋に顔を埋める。
俺は奴の背に腕を回すことも出来ず、罪悪感と安堵感に戸惑っていた。
「龍、俺は……」
「やめろ」
謝罪の言葉を口にしようとした俺を、戒めるように腕に力が篭る。
そして―――。
「……次はお前を泣かせてやるからな」
くぐもった声で、龍が言う。
俺は思わず微笑を洩らした。
「……さぁ。どうだろうな」
「ったく……」
俺は漸く龍の身体を抱き締めた。

証など、必要は無かった。
お前は俺の全てを、既に受け入れていたのだから。
そしてそれはいつでも俺の中に、お前の中にあったのに。

だが、俺はお前を求め続けるだろう。

俺の中の証が、永遠に消えることのないように。

- end -

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